浪花の華 第四話感想

またもや遅れ気味だけどめげずに、第四話「哀(かな)しき宿命(さだめ)」の感想を(笑)。


〈あらすじ〉お定(萬田久子)と耕介(杉浦太陽)が、異国人らしき男に出会った。
男は二人に見知らぬ異国語で書かれた手紙の切れ端を残し、立ち去ってしまう。
話を聞いた章(窪田正孝)は、手紙の裏に高麗屋という文字を見つける。
それは左近(栗山千明)と若狭(池内博之)が根城にしている饅頭屋の名前だった。
「手紙を自分の力で訳させてほしい」と章は天游(蟹江敬三)に手紙を借り、左近の元に向かう。
その頃、龍天王寺には、関白家の使者として側室の滝川が来ていた。
章はその滝川の背後で、左近と若狭が険しい表情をしているのを見る。
関白家が在天に、異国人を捜し出し殺してほしいと頼んできたが、左近はそれに反対していたのだ。


今回は、悪役が出てこない切ない話でしたね〜。
章が訳した文書は、10年前に船が灘波して両親を失い、漂着した日本で囚われの身となった娘が、
兄に助けを求めた手紙だったわけです。
兄は妹を助ける為に日本に密航してきたが、10年の歳月は長すぎた。
妹は関白の側室滝川になっていた・・・。


そして、今回左近が抱える背景も明かされる。
彼女は「在天別流」の頭目「弓月王(宮内敦士)」の妾腹の妹だったのである。
そして、弓月王の影武者として、時には身を危険に晒している。
妹と言っても妾腹で身分も違う自分には、これしか生きる術がないと哀しげに語る左近。
頭目の兄にとっての、自分の存在の小ささに傷ついているのだ。
そのためか、異国人と滝川の関係に自分達兄妹を重ね合わせて、暴走する。
異国人は滝川に会わせずそのまま送り返すという弓月王と若狭の制止を振り切り、兄妹を会わせるが、
結果は彼女の期待したものではなかった。
過去を切り捨てなければ、現在の生活を守れない妹。
そんな妹を、言葉を交わすことも出来ずただ涙を流しながら見つめることしか出来ない兄。
結局、左近がやったことは、残酷な現実を突きつけるだけだったかもしれないのだ。


もう、ここまでくると、誰が悪いとかいう問題ではないです。
それぞれ必死で生きてきた人達が下す決断に、部外者が口を挟む余地等ない。
自らではどうすることも出来ない「哀しき宿命」なのだ。


しかし、そういう意味では左近も「在天別流」として裏の世界で生きなければならない
宿命を背負っていると思うのだ。弓月王は更に重い責任を担う過酷な運命を。
左近は章に「誰もがお前のように心のままに生きられわけではない」と語っていたが、
それは兄も同じなのでは? 


泣き崩れる異国人。若狭は「貴方の妹は死にました」という滝山のメッセージを、
「私は幸せに暮らしています。だから心配しないで」と伝える。
組織の一員として生きながらも、兄を気遣いとっさに優しい嘘をつく若狭。
他人が干渉出来る領域をわきまえているように感じた。


今回は、左近と章の住む世界の違いがますます際立ち、彼女が章に初めて脆い一面を見せる
重要な回でもあったと思う。
左近の悲しみを受け止めるには、章は全然頼りないけど様々な人達に関わり、その心に触れることで、
徐々に逞しくなっている。
左近に「章!」と初めて名前呼びされたしね。次回はいよいよ章大活躍の回みたいだし、楽しみです。
(クーラン)