石井桃子先生死去

児童文学作家、石井桃子先生がお亡くなりになった。
101歳なので大往生なのだろうが、やはり残念に思う。


石井作品を初めて意識したのは「ノンちゃん雲に乗る」だ。
確か、小学三年生の誕生日に近所の友達(の母親がおそらく選んだのだろう)に貰った。
すぐ読んだが、当時は幼すぎて筋を追うだけに終わり、この作品の意味するところが
よく理解できなかった。
その数年後、発熱し臥せっていた時に、なんなとなく目に入って読んでみた。
心にとても響くと言うか、少しばかりいろいろと考え込んだ。
それ以降も何度も読み直し、今も手許にある。

この作品には、時々引っ掛かるというかハッとさせる言葉やシーンがある。
初めて、母親に「名前がある」事を意識して、自分と親は別の生き物だと気付く子供の心理。
一人前に扱われなかったと傷つく子供なりのプライド。
わんぱくでも、人の気持ちを捉えて離さない魅力的なおにいちゃん。
人に迷惑をかけてはいけないということ。
いい子であっても「ひれ伏す心」がないと、まともな人にはなれない。 等々
生きていくうえの智恵というか、大事なルールみたいなものが、決して押し付けがましくなく
書かれている。
むしろ、今、読んだ方が深く頷ける部分がたくさんあるのではないだろうか。


テレビで放映されていた映画も見たことがある。ノンちゃんが鰐淵晴子。おかあさんが原節子
とても上品でバタくさい顔の親子だと驚いた記憶が…(爆)。是非もう一度見てみたい。

ノンちゃん雲に乗る [DVD]

ノンちゃん雲に乗る [DVD]


石井先生の訳で、特に好きなのが、「うさこちゃんシリーズ」と「ピーターラビットシリーズ」。
この二作は、日本の女子ならば知らない人はいないのでは?
これは、当時習っていたピアノの先生の家で待ち時間に読んだ。

今は「ミッフィー」と呼ばれるディック・ブルーナ作のこのキャラクターは、
私の子供時代は「うさこちゃん」だった。訳したのはもちろん石井先生。
私の中ではこれは断じて「うさこちゃん」であって「ミッフィー」ではありません!
ピーターラビット」も「うさこちゃん」もキャラクターのカワイサと相俟って、読みやすく
流れすぎない訳で、ピアノそっちのけで何度読み返したか分からない
(何しに行ってたんだか…)。
残念ながら、ピアノは私には残らなかったが、この二作を読んだ幸せな記憶はずっと私の中に
残っている。


石井先生が亡くなっても、これらの作品は永遠に誰かを楽しませ勇気づけるものになるはずだ。
改めて、石井桃子先生のご冥福をお祈りいたします。(クーラン)